錯視を誰でも楽しめる文字列傾斜錯視 | 新井仁之の錯視科学館 | |||||||
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文字列傾斜錯視 作品集
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改訂版 | ||||||||
文字列傾斜錯視はMSゴシック12ptで傾くように配列されていますので,他のフォント,サイズでは錯視量が少なくなることがあります. | ||||||||
また,ご使用になっているパソコンで文字の拡大表示などが設定されていると,MSゴシック12ptで表示しても錯視量が減ってしまうことがありますので,ご注意ください. | ||||||||
新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
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概要 前半では,これまでに私たちが作成した文字列傾斜錯視の例をご紹介いたします.後半では,最近の私たちの研究により文字列傾斜錯視の要因の特定,除去,強化,さらに文字列傾斜錯視自動生成プログラムの開発に成功したので,それらについて報告します.最後に数式傾斜錯視を発見したので,それも載せました. ここで述べる成果は筆者が提唱している学術分野 『数理視覚科学』 を用いて得たものです. |
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― §1. はじまり ― | ||||||||
そもそも文字列傾斜錯視は,2005年ころに日本のインターネット掲示板等で産声をあげました.当時,文字をタイプして傾きの錯視を作る遊びが流行りました.そして文字を並べて作った傾きの錯視が,匿名で多数掲示板に書き込まれました. | ||||||||
私たちは,この錯視を「文字列傾斜錯視」と呼び,早速研究を開始しました.研究するのに用いた道具は,「最大重複双直交ウェーブレット」と呼ばれる数学です.そしてその成果を,広く一般の方々が気軽に読めるようにネット上に発表しました.次のものです: | ||||||||
[1] 新井仁之,新井しのぶ,文字列傾斜錯視の解析 1, 「コニア画」のウェーブレットによる解析,視覚数学e研究室報告,No. 1 (2005年4月8日) pdf ファイル公開しました | ||||||||
[2] 新井仁之,新井しのぶ,文字列傾斜錯視の解析 2, ウェーブレット解析を用いた文字列傾斜錯視の作成,No. 2 (2005年4月14日) pdf ファイル公開しました | ||||||||
― §2. 文字列傾斜錯視の作成例 ― | ||||||||
特に [2] ではウェーブレットを用いた文字列傾斜錯視の作り方を見出し,その方法を用いて次のような例を作成しました: | ||||||||
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー | ||||||||
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー | ||||||||
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏 | ||||||||
ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏ーナワ夏 | ||||||||
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー | ||||||||
夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー夏ワナー | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
月木土金月木土金月木土金月木土金月木土金 | ||||||||
月木土金月木土金月木土金月木土金月木土金 | ||||||||
金土木月金土木月金土木月金土木月金土木月 | ||||||||
金土木月金土木月金土木月金土木月金土木月 | ||||||||
月木土金月木土金月木土金月木土金月木土金 | ||||||||
月木土金月木土金月木土金月木土金月木土金 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
あるとき,この「月木土金」の錯視を『小学二年生』(小学館) に掲載したいという連絡が,小学二年生の編集部からありました.小学二年生でも読める漢字からできていることがよかったようです. | ||||||||
そこで,小,学,二,年,生の文字をウェーブレット分解し,[2]の原理を用いて,「学小年二生」と配列して並べれば傾きの錯視ができることを見出しました. | ||||||||
学小年二生学小年二生学小年二生学小年二生 | ||||||||
学小年二生学小年二生学小年二生学小年二生 | ||||||||
生二年小学生二年小学生二年小学生二年小学 | ||||||||
生二年小学生二年小学生二年小学生二年小学 | ||||||||
学小年二生学小年二生学小年二生学小年二生 | ||||||||
学小年二生学小年二生学小年二生学小年二生 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
こちらの方が,『小学二年生』にふさわしいということで,2008年12月号に掲載されました.このほかにも,小学二年生の文字の他の配列でも傾きの錯視を作れることが,[2] の方法でわかりました.詳しくはこちらをご覧ください. | ||||||||
『小学二年生』 (小学館)2008年12月号に掲載されたウェーブレットを用いて見つけた文字列傾斜錯視について. | ||||||||
小学館の『ドラえもん もっと!ふしぎのサイエンス』からも文字列傾斜錯視の依頼が来ました.それで作ったのが次の「しずかちゃん」が傾く錯視です. | ||||||||
これは『ドラえもん もっと!不思議のサイエンス』(vol. 4, 2014年7月刊)に掲載されました. | ||||||||
2009年に,『東大式現代科学用語ナビ』 (化学同人) という本が出版されました.これはもともと東京大学の『理学系研究科・理学部ニュース』で連載されている「理学のキーワード」がまとめて編集されたものです.新井仁之が執筆した「錯視とウェーブレット・フレーム」という項目もこの本の中に収められました.本として編集する際に,化学同人の編集部から,画像として「夏ワナー」のような文字列傾斜錯視を載せてはどうかという提案がありました. | ||||||||
そこで作成したのが次の文字列傾斜錯視です.上記の錯視のときとは少し異なりますが,見出すのにやはりウェーブレット解析を用いています. | ||||||||
化学同人化学同人化学同人化学同人化学同人 | ||||||||
化学同人化学同人化学同人化学同人化学同人 | ||||||||
人同学化人同学化人同学化人同学化人同学化 | ||||||||
人同学化人同学化人同学化人同学化人同学化 | ||||||||
化学同人化学同人化学同人化学同人化学同人 | ||||||||
化学同人化学同人化学同人化学同人化学同人 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
さて,2009年11月に東京大学理学部数学科・大学院数理科学研究科の同窓会が開催され,それに先立ち,同窓会の会報が発行されました.同窓会から,2008年度に引き続き,今年度も何かオリジナル錯視を作成してほしいという依頼がありました.2008年度は「フラクタル螺旋錯視」を載せました.今年度は次の錯視を作成し,同窓会会報の表紙を飾っています.これらもウェーブレット解析をある程度しながら見つけたものです. | ||||||||
東大一高東大一高東大一高東大一高東大一高 | ||||||||
東大一高東大一高東大一高東大一高東大一高 | ||||||||
高一大東高一大東高一大東高一大東高一大東 | ||||||||
高一大東高一大東高一大東高一大東高一大東 | ||||||||
東大一高東大一高東大一高東大一高東大一高 | ||||||||
東大一高東大一高東大一高東大一高東大一高 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会 | ||||||||
十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会 | ||||||||
会窓同月一十会窓同月一十会窓同月一十会窓同月一十 | ||||||||
会窓同月一十会窓同月一十会窓同月一十会窓同月一十 | ||||||||
十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会 | ||||||||
十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会十一月同窓会 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
なお,東大数学科の同窓会会報の表紙は,その後もオリジナル錯視画像で飾ることを依頼され,2010年度は双曲型錯視,2011年度は東大教養学部キャラクターのユータス君が浮遊する錯視を作成し,表紙となりました. | ||||||||
数学的方法で作成した文字列傾斜錯視とその解析については,以上のほかに次の新聞,雑誌,テレビ等にも掲載されました: | ||||||||
神奈川新聞 (2005年10月16日) 「知の遊歩道」で特集記事. | ||||||||
論座 (朝日新聞社,2006年7月号) 「最新!J科学」で特集. | ||||||||
言語,Japanese Psychological Research誌(北岡明佳先生著)で紹介. | ||||||||
千葉県立現代産業科学館にて展示(2010年10月9日-11月28日). | ||||||||
― §3. 世界初!文字列傾斜錯視の要因を特定,錯視の除去と強化に成功 ― | ||||||||
さて,私たちはさらに文字列傾斜錯視を数理的,神経科学的に研究しました.そして,世界で初めて文字列傾斜錯視の要因の特定に成功し,文字列傾斜錯視画像に含まれる錯視成分を除去したり,強化することができるようになりました.その結果が下図です.同じような文字の形でありながら,錯視が無くなったり,増えたりしていることがわかります. | ||||||||
なおこの解析に使った数学は新井・新井(JSIAM Letters, 2009)が開発した単純かざぐるまフレームレットというものです. | ||||||||
― §4. 文字列傾斜錯視自動生成アルゴリズムの開発に成功 ― | ||||||||
2012年には,先端的な数学を駆使して文字列傾斜錯視を自動的に生成するアルゴリズムを作りました(新井仁之,新井しのぶ,特許出願,(独) 科学技術振興機構). |
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これも数理視覚科学による成果の一つで、脳内の視覚情報処理の研究から作ったものです.この文字列傾斜錯視自動生成プログラムとその原理となるアルゴリズム(新井・新井)を利用して作成した例として次のようなものがあります: | ||||||||
例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い! | ||||||||
例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い! | ||||||||
!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例 | ||||||||
!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例 | ||||||||
例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い! | ||||||||
例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い!例年以上今年は、寒い! | ||||||||
!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例 | ||||||||
!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例!い寒、は年今上以年例 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
文字列傾斜錯視自動生成プログラムをMATLABに実装し,実行した画面の例です. | ||||||||
― §5. 文字列傾斜錯視の原因について ― | ||||||||
文字列が傾いて見える仕組みは何か? | ||||||||
このことについて,よく耳にするのは次のような説明です.「文字列が傾いて見えるのは,各文字の中の水平線が,文字を配列したときに,右下がりあるいは右上がりに並んでいることが原因である.」(この説をここでは水平線説と呼ぶことにします.) | ||||||||
確かにそのようになっていると文字列が傾いて見えることが多いと言えます.しかし,これだけをもって原因とすることは正しくないというのが,私たちの見解です.私たちは,見た目には傾斜していく目だった水平線の列がなくとも,脳は傾いて見えると知覚することがあることを発見しました.このことを示すために、今回は次のような文字列傾斜錯視を,文字列傾斜錯視自動生成プログラムの基盤となるアルゴリズム(新井・新井)を用いて作ってみました(このような例は他にも作れます). | ||||||||
甲綱偽執火心甲綱偽執火心甲綱偽執火心 | ||||||||
甲綱偽執火心甲綱偽執火心甲綱偽執火心 | ||||||||
心火執偽綱甲心火執偽綱甲心火執偽綱甲 | ||||||||
心火執偽綱甲心火執偽綱甲心火執偽綱甲 | ||||||||
甲綱偽執火心甲綱偽執火心甲綱偽執火心 | ||||||||
甲綱偽執火心甲綱偽執火心甲綱偽執火心 | ||||||||
心火執偽綱甲心火執偽綱甲心火執偽綱甲 | ||||||||
心火執偽綱甲心火執偽綱甲心火執偽綱甲 | ||||||||
作:新井仁之・新井しのぶ | ||||||||
私たちの作ったこの例では、たとえば一番上の行の文字列について、文字を構成する水平線を,右下がりになっていくように拾い出せるかもしれませんが、しかし,その一方で右上がり,水平,あるいは上がったり下がったりするように水平線を拾い出すことも可能です.このようにさまざまなタイプの水平線があるとき,水平線説で説明することにはかなり無理があります. | ||||||||
そこで,新井仁之と新井しのぶは,脳内の視覚情報処理に立ち返って,文字列が傾いて見えるより一般の一般則を先端的な現代数学を用いて見いだし,数学的に定式化しました(2011).水平線説はこの法則の特別な場合として含まれます. | ||||||||
詳しくは、ITmedia NEWS に書いた記事 | ||||||||
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/12/news030_2.html | ||||||||
をご覧ください。 | ||||||||
そして、この新井・新井の一般則を使って§4で述べた文字列傾斜錯視自動生成プログラム及びその基礎となるアルゴリズムを作成し,文字列傾斜錯視の自動生成に成功しました. | ||||||||
― §7. 文字列傾斜錯視を使った年賀状 ― (2013年12月) | ||||||||
文字列傾斜錯視を使うと,こんな面白い年賀状もつくれます. | ||||||||
この文字列傾斜錯視は,文字列傾斜錯視自動生成プログラムを使って見つけたものです. | ||||||||
― §8. 数式傾斜錯視 ― (2009年11月) | ||||||||
ところで文字列だけではなく,数式でも傾く錯視があります.数式傾斜錯視です.これは拙著『ウェーブレット』の校正中(2009年11月)に発見したものです. この本は2010年1月に刊行されました. | ||||||||
新井仁之著『ウェーブレット』(共立出版,2010年1月刊)の原稿より | ||||||||
この本にはいくつもの数式傾斜錯視が含まれています. ちなみにこの本では文字列傾斜錯視を解析したウェーブレットとフレームレットが解説されています. | ||||||||
この錯視を2009年11月に北岡明佳先生(立命館大・文学部)にお知らせしたところ,右下がりのものが欲しいとご返事をいただきました.前掲書『ウェーブレット』の校正を探したところ,右下がりのものもありました.次のものはそれを若干修正したものです.数学的意味は同義です. | ||||||||
©Hitoshi Arai, Nov. 2009. | ||||||||
― §9. 見る距離によって錯視量の異なる文字列傾斜錯視 ― (2012年12月) | ||||||||
遠くから見たら傾いて見える文字列傾斜錯視、近くで見ると傾いて見える錯視など、ちょっとマニアックな文字列傾斜錯視です。詳しくはこちらをご覧ください。 | ||||||||
文字列傾斜錯視には異なるタイプがある | ||||||||
― §10. ローマ字の文字列傾斜錯視 ― (2015年10月) | ||||||||
文字列傾斜錯視自動生成プログラムでは、日本語の文字(漢字、ひらがな、カタカナ)以外の文字、たとえばローマ字やロシア語の文字などでも傾斜錯視を作ることができます。その例を挙げます。 AMaZonを並べ替えてできる文字列傾斜錯視です。 | ||||||||
このほかにも、いろいろなローマ字傾斜錯視があります。たとえば | ||||||||
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最新記事 真っ直ぐなのに斜めに見える"不思議な文字列" その仕組みとは? ITmedia NEWS | ||||||||
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文字列傾斜錯視自動生成プログラムを用いた作品を順次紹介. | ||||||||
文字列傾斜錯視日誌 詳しくはこちら | ||||||||
文字列傾斜錯視自動生成ソフト -WEB版 - 詳しくはこちら | ||||||||
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改訂履歴 | ||||||||
改訂版(2010年12月11日)追加: §3 世界初!文字列傾斜錯視の錯視の要因を特定,錯視の除去と強化に成功 | ||||||||
改訂版(2012年3月10日)追加: §4 文字列傾斜錯視の自動生成プログラムの開発に成功 | ||||||||
改訂版(2012年3月13日)追加: §5 文字列傾斜錯視の原因について | ||||||||
改訂版(2012年3月19日,4月2日):§4,5 文章の微修正 | ||||||||
改訂版(2014年8月25日):§3に「しずかちゃん」が傾く錯視を追加 | ||||||||
改訂版(2015年10月12日):§10 ローマ字による文字列傾斜錯視 | ||||||||
改訂版(2016年5月21日) 文字列傾斜錯視自動生成ソフト -WEB版 - にリンク | ||||||||
改訂版(2018年6月16日) 最新記事 ITmedia NEWS の情報を追加 | ||||||||