数学・数理科学と科学技術の諸分野との融合的研究, | ||||||||
数学と産業界の産学連携研究, | ||||||||
そして新しいイノベーションを生み出すために. | ||||||||
ウェーブレットは,数学と諸科学,技術,産業を結ぶ架け橋です. | ||||||||
Meyer's wavelet |
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ウェーブレット | ||||||||
新井 仁之 | ||||||||
東京大学大学院数理科学研究科 教授 科学技術振興機構 数学領域 さきがけ一期生 |
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近年,数学と科学技術との連携がクローズアップされています.ウェーブレットはもともとは石油探索の技術者の研究に端を発し,その後,純粋数学とディジタル信号処理,特に画像処理などの分野とが連携して急速に進展した分野です.FBIの指紋の画像データ圧縮,JPEG2000など実用的な発展もあります.このようにウェーブレットはもともと技術,産業が密接に関連しながら発展してきた数学です. | ||||||||
またウェーブレットは技術,産業に役立つ数学というだけでなく,純粋数学としても深い内容をもち,科学技術の諸分野にも応用されています.ウェーブレットは科学技術の諸分野をこれからさらに発展させる数学のひとつであり,数学と産業界を結ぶ大きな架け橋の役割も果たしていくことになると思われます. | ||||||||
画像の多重解像度解析 ウェーブレットは画像処理にも応用されてます |
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2006年に文部科学省 科学技術政策研究所により『忘れられた科学 -数学』が報告され,数学の科学技術への応用・発展に対する注意が広く喚起されました.そして数学と科学技術の諸分野,さらに産業との連携が注目されるようになってきました.本書が数学と科学技術の融合的研究,数学と産業界の産学連携研究,そして数学による新たなイノベーションを生みだすことに少しでも役立てば幸いです. | ||||||||
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私自身はウェーブレットを発展させたフレームレットを開発しながら,視覚と錯視を研究しています.そして数学を軸にして視覚科学,脳科学,神経科学,知覚心理学などの諸分野を融合した数理視覚科学,視覚数学という分野を切り開こうと研究を進めています.本書では視覚科学的な観点から私たちが科学技術振興機構の数学領域さきがけ研究「ウェーブレットフレームを用いた視覚の数理モデル」(研究者 新井仁之)によって開発した新しい「単純かざぐるまフレームレット」も解説してあります. | ||||||||
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追記 (2011年5月):文部科学省の『忘れられた科学-数学』が発表されてから5年後,『「忘れられた科学」から「越境する数学」へ』(読売新聞科学部デスク 長谷川聖治氏)という記事が Yomiuri Online に発表されました.この記事により,数学界がいかに社会や科学技術に越境したかを端的に知ることができます.ところで,私はJST数学領域「さきがけ」において,新しいウェーブレット・フレームであるかざぐるまフレームレットを開発し,視覚と錯覚の研究をしていましたが,その記事の中で,JST数学領域「さきがけ」における錯覚の研究が事例としてあげられていました. | ||||||||
共立出版 ISBN 978-4-320-01698-9 |
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内容紹介 |
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本書では,ウェーブレット,フレーム,ウェーブレット・フレーム,フレームレットについて詳しく丁寧に解説してあります.第1部は計算機でとにかくウェーブレットを使ってみたいという人向けに書きました.第II部以降はウェーブレット,ウェーブレット・フレーム,フレームレットの数学的理論が記されています. | ||||||||
第I部 | 有限離散ウェーブレットとフレーム | |||||||
コンピュータで実際に計算することを念頭に,有限離散データのウェーブレット解析,あるいはウェーブレット・フレーム解析について,応用例を交えながら詳説しました. | ||||||||
第II部 | 基底とフレームの一般論 | |||||||
ウェーブレット理論,あるいはそれを一般化したウェーブレット・フレームの理論では,基底とフレームに関する議論が必要になります.ここでは,関数解析学の基礎から始めて,シャウダー基底,双直交基底,正規直交基底,リース基底,フレームの一般論を解説してあります. | ||||||||
第III部 | 無限離散信号に対するフレームとマルチレート信号処理 | |||||||
ウェーブレット理論とマルチレート信号処理は密接に関係しています.ここでは(多次元)マルチレート信号処理に関する基本的な定理に数学的に厳密な証明を付し,ウェーブレット・フレーム理論との関連などを詳しく述べました. | ||||||||
第IV部 | 連続信号に対するウェーブレット・フレーム | |||||||
連続ウェーブレット変換について述べたあと,一般化多重解像度解析について解説してあります.そして正規直交ウェーブレット,フレームレットの構成が書かれています. | ||||||||
正誤表 (2011年12月8日更新) | ||||||||
詳細目次はこちら(共立出版のHP) | ||||||||
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