新井仁之,フーリエ解析
数学セミナー (日本評論社),2006年6月号,pp.24-27.
  数学セミナーの特集「解けない方程式を解くには」に収録の解説の一つです.熱方程式を解くことから,どのようにフーリエ級数の考え方が生まれたのかをフーリエ級数の最新の話題も併せて紹介しました.本年度アーベル賞を受賞した L. カールソン氏の受賞の仕事の一部についても書きました.
  今から二十年近く前にカールソン氏はプリンストン高等研究所に半年か一年(?)滞在してました.私もその時期にちょうどプリンストン大学のスタイン先生のところに客員研究員として滞在していたので,何度かお話をする機会に恵まれました.そのとき,多変数コロナ問題の攻略の思想を教えてもらったのですが,まだ解くことができてません.言うまでもないことですが,コロナ問題は一変数の場合,カールソン氏によって1960年代に解かれました.プリンストン大学の廊下で,スタイン先生とカールソン先生が何かを議論している姿を見かけて,解析学の歴史はここで作られているのだなと妙に感動しました.