フーリエ解析学
フーリエ解析学

新井仁之 著

朝倉書店,2003年7月

本書はフーリエ解析を基礎からはじめ,特に多変数の場合に焦点を当てて解説したものである.多変数フーリエ解析は多次元の現象を研究する際に用いられている.また近年では,ディジタル画像処理など多次元ディジタル信号処理で本質的な役割を果たしている.この本では,そのような応用に使われている多変数フーリエ解析を純粋数学の立場から述べることを試みている.またある部分は数学的な観点から一般化して解説している.このようなコンセプトの教科書はこれまであまり見受けられず,本書は従来の多くの応用に力点をおいたフーリエ解析の本とは違ったスタイルのものとなっている.なお本書で述べられているいくつかの定理は,ここではじめて証明されたオリジナルのものである.

正誤表 (pdf) [2008年6月2日更新]

注:第2刷以降ではすでに修正されているところもあります.
ホームページ版付録

本書は主に多変数フーリエ解析の応用に重点をおいているので,解説しなかったが,多変数フーリエ解析の非常に奇妙な現象の一つにピンスキー現象がある.たとえばギブス現象は不連続な部分があるとその近辺でフーリエ級数が不安定になるというものである.しかし不連続な部分の影響は遠くには及ばない.ところが,3変数以上になると不連続な部分での効果が,とんでもないところに波及してしまうのである.これがピンスキー現象である.百聞は一見にしかず.次の計算機による動画を見て欲しい.

ピンスキー現象の数学的な解説は

新井仁之,無限の不思議 - 実解析学における無限 -,『数学のたのしみ』

26 (2001),49-68

の第8節 無限和と次元 - ピンスキー現象 - に記してある.