錯視の科学館にようこそ!   
  数理視覚科学の成果をお楽しみください.   
     
  みなさんは,錯視という言葉をお聞きになったことはありますか?   
     
  錯視というのは,視覚が引き起こす錯覚の一種です.百聞は一見にしかず,まずは,錯視の一例をご覧ください.  
                 
 
フラクタル螺旋錯視(新井・新井) ©Hitoshi Arai and Shinobu Arai, 2007.
 
  この図形を見ているとき,みなさんは目の錯覚を起こしてます.   
  どんな錯覚を起こしているのかおわかりになりますか?   
     
   多分,黒い小さな図形が渦巻いているように見えていることでしょう.しかし渦巻いて見えるのは目の錯覚で,本当は同心円状に並んでいるのです.  
   この図形は新井仁之・新井しのぶが作った渦巻き錯視の一種で,フラクタル螺旋錯視と呼ばれています.   
                 
   錯視の科学館では,このような錯視を数学を用いて研究した成果の一部をご覧いただきます.        
     
  錯視の研究に数学?        
     
  不思議な気もしますが,錯視の研究に数学がとても役に立つのです.このことについて私見を説明いたします.        
                 
  視覚は情報を脳内で処理している.           
   目から入った外界の情報は,網膜でいろいろな処理を受けたあと,その多くは視神経を通って大脳皮質の後ろの方にあるV1野という部分に伝送されます.  
          
  脳    
  V1野でいろいろな視覚の情報処理が行われ,それがV1野の隣に位置するV2野に送られ処理されます.さらに背側経路と腹側経路に分岐して,それぞれ処理されながら頭頂葉,下側頭葉という視覚連合野に送られます.フィードバックもあります.    
   
   
   
   
     
   
  このような脳内の情報処理によって私たちはものを見て認識することができるのです.そのプロセスはまだ完全には解明されていません.錯視はこの網膜から始まる脳内の情報処理の過程で発生しているのです.      
  そのメカニズムを数学を駆使して解明しようというのが私たちの研究テーマです.          
                 
  錯視と数学,その関係は?          
  具体的には次のように研究を進めています.        
   脳の機能を調べながら,脳が行う視覚の情報処理の仕方を数式で表すようにします.つまり,視覚の数理モデルを作るのです.そして脳内の視覚情報処理の様子を記述する数式ができたら,本当にそれが脳の計算を表しているのかどうかを錯視を利用して調べるのです.というのは,この科学館の展示でご覧になるように私たちの視覚は錯視を起こしてしまいます.したがって,もしも考えた数式が脳内の情報処理を表しているとしたら,それをコンピュータにプログラムすれば,コンピュータが私たちと同様に錯視を発生させるはずです.実際,筆者らは大脳皮質のV1野での情報処理を数式で表し,それをコンピュータに組み込んで,V1野で起こると考えられる多くの錯視をコンピュータに発生させることに成功しました.  
                 
  数理科学        
          
  もっとすごいことができる.  
   ところで,錯視,脳,数学の関係はこういったことにとどまりません.本物の脳を使ってできないことでも,数学を使ってできることがいろいろとあるのです.その一つが  
     
    数学による錯視の要因の特定,及び錯視の要因の除去と強化     
         
  です.ある錯視図形を見たとき,脳内の神経細胞のうち錯覚の要因となるものがあるはずです.もしもその神経細胞のみ活動を停止させることが可能ならば,錯覚は起こらないはずです.しかしそれを実際に実行することは,現時点ではほぼ不可能です.ところがコンピュータに実装した視覚では可能です.錯視図形を入力して,錯視の要因となる神経細胞に相当する計算を実行しないように操作します.すると,計算機は錯視を起こさないような図形を出力するのです.        
     
  視覚科学   
                 
  それでは,いろいろな錯視とその数理的な解析をおたのしみください.そして錯視のメカニズムがどのようになっているのか,その謎に挑んでみましょう.        
     
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        館長:東京大学大学院数理科学研究科教授 新井仁之